0歳児の発達

産後一年間の発達を詳しくたどってみよう

 赤ちゃんは、生まれた後の発達の変化が早く、2・3ヶ月はあっという間に過ぎてしまう。首の座ったのは覚えているけれど、いつ寝返りしたのか、いつ立っちしたのか、詳しい記憶がないという方が多いのです。特にはじめの2・3ヶ月はあまり大きな変化も感じられず、寝たり起きたり、おっぱいを飲んだりするだけのように見えますが、実際にはこの間に次へ成長するための力をしっかり蓄えているのです。そしてこの貯めこんだ力が4ヶ月以降の大きな変化の土台になります。

 フジキ保育室のホームページにあえてこのページを追加したのは、0歳児のはじめの一年間がその後の発達に大きく影響することを痛感し、この期間をどう過ごしたらよいかを一緒に学ぼうと考えてのことです。出産後の数ヶ月を相談する人もなく、母と子だけで不安な思いで育児している方に少しでも参考にして頂けたらと思います。

退院後の母と子

 無事出産して家族や友人の祝福を受け、家族が増えた喜びを夫と共にかみしめている間に退院の日はやってきます。実家で手伝ってもらって、或いは、我が家へ直行して、それからの母子二人だけの日中の生活はどうやって過ごしましたか。「おっぱいは足りているのか」とか、「あんまり寝ない」とか、「ウンチが出ない」とか、「ぐずり泣きが多い」とか、「何をして欲しいのかわからない」とか、はじめての子育ては疑問ばかりです。

 「お腹もいっぱいで、おむつも替えて、寝て起きたのに気嫌が良くない、あとどうしてあげればいいの」「夜はひっきりなしに起きるので寝不足で辛い」「仕事もしなければならないのに赤ちゃんが気になってまとまったことが出来ない」など悩みはつきません。

SOSを発して

 子育ては孤立無援ではやりきれません。両親、兄弟姉妹、友人、隣人、更に行政が運営する支援センターや保健所の助産士さんなど専門家の手を借りたり、積極的に訪ねて行ったり、安心して楽しく子育てに励める態勢作りをしたいものです。周りの人との結びつきを強める努力は、子育てに欠かせない親としての努めでもあります。親が心を開いて人と関わっていけば、子どもの世界も豊かに広がります。ひとりで頑張りすぎないで、周りへSOSを発信し、気軽にいろいろな施設やグループに顔を出して仲間を増やしましょう。

 また可能なら短期間でも夫に育休を取ってもらって一緒に家事・育児をすることで、その後の生活がどんなにスムーズになるか、その効果ははかり知れません。ただ夫が育休をとれる環境にない場合もあります。出産前の身軽なうちにいろいろな制度をしっかり調べ情報を集めて、安心して子育てできる環境づくりを設定するのも賢い方法です。

赤ちゃんの個性を見極める

 生まれたばかりの赤ちゃんにもそれぞれ個性がしっかりあって、例えば、神経質でちょっとした物音や変化にもすぐぐずり出す子や、飲んでは寝るを繰り返す眠りっぱなしの子、反対にあまりしっかり寝ない子、体を良く動かす活発な子と逆にあまり動かない子など、それぞれに違いがあります。我が子はどういうタイプなのかをよく観察して、個性にあった対応をしてあげることも大切です。

 子どもの個性にあった育て方とは、例えば神経質な子どもはとても不安感が強くちょっとしたことでも泣き出すので、すぐ抱き上げて抱きしめ、優しく話しかけて安心させ、歌を歌ってあげるなど心地よい気分にしてあげましょう。

 また手のかからないよく寝る子や、一人で置いておいてもぐずらない子は、特に気をつけて放っておかないようにしましょう。こういう泣くことが少ない子はつい世話がおろそかになり、発達に問題が起きることがあります。いつも注意して話しかけたり、あやしたりして愛情をかけ、親がすぐそばに居ることを教えてあげましょう。

 子どもの成長はゆっくり見守り、決してせかしてはいけません。親がゆったりした気持ちで、優しく世話をしてあげれば、心が安定しのびのび育ちます。

 赤ちゃんの性格にはいろいろな傾向が混ざっていますが、どの子どもにも共通して、親が出来るだけそばにいて安心させ、抱っこで話しかけたり、あやして遊んだり、明るい笑顔を向けて愛情表現をしてあげることがなにより大切です。特に子どもが何かを求めたり訴える時、何を置いてもすぐ子どもの所へ行って求めていることをかなえてあげましょう。忙しくて赤ちゃんの世話ばかりしていられないと言いたいでしょうが、はじめの3・4ヶ月をきちんと赤ちゃんと向き合い、受け入れてあげれば、少しづつ気持ちが安定して、むやみにぐずり泣くことはなくなっていきます。母子の信頼関係が出来ることで少しづつ待てるようにもなります。

大きく変わる4ヶ月 発達のチェック項目

 まず首がすわって、あやすと誰にでもほほえんでいたのが、知っている人にほほえんだり、自分の方からほほえむようになるのが、4ヶ月を迎えた子どもの大きな特徴です。手の人差し指と親指を開いてカニのハサミのように指を使えたり、眠りと目覚めの自然のリズムが整ったり、物を目で追う追視や、いないいないばあに反応してはしゃいだり、3ヶ月までの発達の基礎の上に4ヶ月が大きく変化します。

 4ヶ月目からは次々に発達し、動きや様子が変化するので、この時期に月齢相応に育っているかを観察してみることも大事です。次にあげる項目は、田中昌人氏考案によるチェックの項目です。

①首がすわり、自分の周りを見回せるかどうか。

②相手をしっかり見つめるかどうか。

③知っている相手にほほえみを向け「見つけた」と目を輝かせるか。

④90°以上180°までの追視が出来るか。

⑤母指の開き方は、手のひらの外へ出てくるか。カニのハサミのような動かし方をするか。

⑥いないいないばあをすると気持ちが高まってはしゃぎ出すか。

⑦運動系や感覚系で、左右非対称性が非常に強いことはないか。例えば、右手と左手の動きが違うとか、親指の一方が手の掌に入ってしまうとか、追視で一方のどこかで「コキン」と途切れるとか。この時期は正中線(体の真ん中)で捉えて対称的に発達するはずの力が、非対称性を色濃く持っている時は注意する。未熟児ではないのに6・7ヶ月になってもこの4ヶ月の新しい発達の力が出てこない時は専門家の診断が必要かも知れません。

 以上のことを生後3ヶ月から4ヶ月へ移行した時に観察することが大切です。

乳児期後半の発達

 4ヶ月の大きな節目を越えた後の育ちは、運動面の変化が大きく、それにともなって心の育ちもめざましいものがあります。手足の動きが一段と活発になりますので、起きている時はオムツをはずしてパンツで身軽に動けるようにしてあげたり、シャツとズボンに分かれて体を動かしやすい衣服にし、なるべく薄着で活動しやすくしてあげます。睡眠のリズムも整ってきますから、天気の良い日は抱っこで外へ散歩に連れ出しましょう。一日の生活にメリハリをつけて、日中沐浴をして、その後裸ん坊でひなたぼっこを5分から10分し、ベビーマッサージをして体中を優しくなでてあげ、あやしあそびでお母さんと楽しく過ごすと赤ちゃんは最高に幸せです。赤ちゃんが楽しく嬉しくて、アーウーと喃語でお話しする時、大脳が発達します。心地よく安定した生活環境を整えてあげれば、赤ちゃんは自らの内的な発達の力をぐんぐん伸ばしていきます。

 また、子どもの個性を認めながら、いい部分を伸ばしてあげる育て方をすると、自信に溢れた性格になります。乳児期の性格形成には親の言動が最も大きな影響を与えます。子どもは親の持つ価値観に大きな影響を受けるのです。

どんな性格の赤ちゃんに対しても一様に大切なのは、母親が「いつもそばにいる」「刺激のない環境に放っておかない」「歌を歌ったり、あやし遊びをしてあげる」「よく話しかけてあげる」「絵本を読んであげる」など良い刺激を与えることです。

 小さい頃に形成された性格、例えば、周囲への信頼や自分への自信など人間関係に関わる特徴は幼少期に決まると考えられています。ただし個性の特徴は成長するにつれ、消えたり変化したりもするのであまり細かいことで悩まない方がよいし、それより、せかさずゆっくり優しく接してあげることが大事です。

乳児期後半で大切なこと

 この時期大切なのは「太ももを鍛える」ことです。これができているかいないかは、その後の活力につながります。

 体幹の次にまず頸、それから腰とお尻、足がしっかりしてきます。この関連が整い、各種のバランスで調整が出来ていくことを目指した保育が大事です。「一歳前後の子どもは、顔色と太ももと手の指を見ること」で、その育ち方がわかります。

 家庭で育つ子どもは、どうしても外遊びの機会が足りないようですし、仲間がいなければ、遊びの内容も体の動かし方も限られます。出来るだけ時間を作って、一日2時間程度は母と子で一緒に歩いたり走ったり、楽しく活発に運動してほしいものです。体を作ることは、心を育てることです。公園に咲く草や花を見たり、虫を捕まえたり、木の実を集めたり、おままごとをしたり、ジョ―ロやスコップを持っていって、砂場で水と砂でケーキを作ったり、工夫すれば楽しいことはいっぱいあります。賢い子どもに育てるには、手も足も五感も総動員して、創造力を働かせて遊ぶことです。実体験の乏しい子どもに、絵本やDVDや教育教材をいくら与えても絵空事です。実際に手にし目にして経験したこと以外は本当には理解できないのです。

 人の能力には、本来それ程の大差はないと言われています。しかし、生まれてからの養育環境によって、かなりの差が生じてしまいます。過保護、過干渉でなく、また自由奔放でなく、必要な時に必要で適切な子育てをしていけば、どの子も元気で明るく幸せな生き方を全うする力を身につけていくでしょう。

 一方人が親になるには一定の覚悟が必要です。我が子を将来社会の一員として役立てるように育てたいと願い、そのための努力をする覚悟です。この覚悟が曖昧だと何か不都合が生じたり、自分が思ったようにならなかった時、こんなはずじゃなかったと弱気になってしまいます。子育ては一生続きます。子どもを授かって神に感謝する嬉しい時もあれば、人には言えない苦しい時もあります。それでも変わらないのは、子どもが居てくれることの有り難さです。社会が開け、世界が広がり、未知の経験が無限に飛び込んできて、人から親へと成長させてくれます。

 さあ、愛と感謝の気持ちを込めて、子どもと向き合いましょう。

 子育てバンザイ !